Claude は多くの言語を扱えますが、性能は言語によって差があります。公式ドキュメント Multilingual support が公開している言語別の実測値と、応答言語を確実に固定する書き方、翻訳・ローカライズで押さえるべき点をまとめます。
言語別の相対性能を数字で見る
公式は、英語を100%とした相対性能の表を公開しています。ゼロショットの chain-of-thought 評価によるもので、拡張思考を有効にした Claude Sonnet 4.5 と Claude Haiku 4.5 の値です。
| 言語 | Claude Sonnet 4.5 | Claude Haiku 4.5 |
|---|---|---|
| 英語(基準・100%固定) | 100% | 100% |
| スペイン語 | 98.2% | 96.4% |
| イタリア語 | 97.9% | 96.0% |
| ポルトガル語(ブラジル) | 97.8% | 96.1% |
| フランス語 | 97.5% | 95.7% |
| インドネシア語 | 97.3% | 94.2% |
| アラビア語 | 97.2% | 92.5% |
| ドイツ語 | 97.0% | 94.3% |
| 中国語(簡体字) | 96.9% | 94.2% |
| 日本語 | 96.8% | 93.5% |
| 韓国語 | 96.7% | 93.3% |
| ヒンディー語 | 96.7% | 92.4% |
| ベンガル語 | 95.4% | 90.4% |
| スワヒリ語 | 91.1% | 78.3% |
| ヨルバ語 | 79.7% | 52.7% |
この数値は MMLU の英語テストセットを、プロの翻訳者が14言語へ翻訳したものに基づいています。機械翻訳ではなく人手の翻訳を使っているため、デジタル資源の少ない言語でも評価の質が保たれている、というのが公式の説明です。表に無い言語も扱えるので、実際に使う言語で試すことが推奨されています。
日本語はどのくらいか
日本語は Sonnet 4.5 で 96.8%、Haiku 4.5 で 93.5% です。中国語(簡体字)や韓国語とほぼ同じ帯で、英語との差は3ポイント程度に収まっています。
ここで注目すべきはモデル階層による差の開き方です。日本語の場合、Sonnet と Haiku の差は3.3ポイントです。ところがスワヒリ語では 91.1% と 78.3% で12.8ポイント、ヨルバ語では 79.7% と 52.7% で27ポイントも開きます。
つまり、安いモデルへ落とすときの劣化幅は言語によって違います。日本語のアプリケーションで Haiku を検討する場合、英語での評価結果をそのまま当てにしても大きくは外れませんが、資源の少ない言語を扱うなら必ずその言語で測り直す必要があります。コスト削減の判断を英語のベンチマークだけで決めない、というのが実務上の要点です。
応答言語はシステムプロンプトで固定する
Claude は会話から応答言語を推測しますが、本番のアプリケーションでは明示すべきだと公式は述べています。最も確実な置き場所はシステムプロンプトです。会話が何ターン続いても指示が変わらないためです。
system: "Always respond in French, regardless of the language the user writes in."
利用者が実行時に言語を選べるアプリケーションでは、その選択をシステムプロンプトに埋め込みます。ユーザーのメッセージから Claude に推測させてはいけません。ユーザーが英語で質問しただけで応答言語が切り替わってしまうからです。
2言語間の翻訳をさせたい場合は、両方の言語を名指しします。「ユーザーのメッセージをドイツ語から韓国語へ翻訳してください」のように、入力側と出力側の両方を書きます。
翻訳・ローカライズの実務上の注意
公式が挙げている実務上の注意は3点です。
- 言語の文脈をはっきり伝える。Claude は対象言語を自動で判定できますが、入力言語と出力言語を明示したほうが安定します。文章の自然さを上げたいときは「母語話者のように慣用的な言い回しで書く」といった指示を足すと効きます。
- その言語の文字体系で入力する。ローマ字への転写ではなく、元の文字のまま渡します。日本語なら日本語表記のまま送る、ということです。
- 文化的な文脈を考える。実際に通じる文章にするには、単なる翻訳を超えた文化的・地域的な配慮が要ります。
加えて、一般的なプロンプトの書き方の指針もそのまま効きます。多言語だからといって特別なテクニックが必要になるわけではなく、普通に良いプロンプトが多言語でも良いプロンプトである、という位置づけです。
どこまでの言語が使えるか
公式が示している範囲は次のとおりです。
- 標準的な Unicode 文字を使う世界のほとんどの言語で、入力の処理と出力の生成ができる
- 性能は言語によって異なり、話者の多い言語で特に高い
- デジタル資源の少ない言語でも、意味のある能力を保っている
「表に載っている14言語だけが対応言語」ではない、という点が重要です。公式自身が「表にある言語以外にも対応しているので、自分のユースケースに関係する言語で試してほしい」と書いています。
ただし「試してほしい」は「測ってほしい」と読むべきです。ヨルバ語の Haiku が52.7%だったように、言語によっては実用に届かない組み合わせが実在します。多言語で本番投入する前に、成功基準を決めて評価を作る手順を通しておくのが安全です。